IRORI場〜前橋七夕まつり〜
読んでくださっている皆さん、いつもありがとうございます!玉木です。
IRORI場オーナー二人による現地レポート第4弾!今回は地元のお祭り「前橋七夕まつり」について書いてくれました!地元の方の想いや、二人の想いが伝わるレポートになっています。ぜひお読みください!
目次
前橋七夕まつり
7/7(日)は七夕でした。IRORI場がある群馬県前橋市では毎年「前橋七夕まつり」が開催されています。
今回はそのお祭りに僕らのフードチーム『slowmore』が出店をしたので、その様子をお伝えします。食べ物や田舎暮らしに興味がある人はぜひ読んでみてください。
1.前橋七夕まつりとは
前橋では古くから「夏越し」の行事として『七夕まつり』がおこなわれている。正式に祭りとして開催されるようになったのは1951年からで、そろそろ開幕70周年を迎える伝統あるお祭りだ。北関東(茨城・栃木・群馬)では最大級の七夕祭りで、物産市などは多くの人で賑わう。
今年は7/4〜7/7までの4日間。前橋の街中には9つの「通り」があり、それゆえ『Qの街』という呼び名もあるが、七夕まつりでは、そのそれぞれの通りが趣向をこらした飾りつけで道中を楽しませてくれる。
これらは毎年違うので、地元の方たちの情熱がひしひしと感じられる。
前橋生まれの僕たちも、よく夏はここに遊びに来ていた。地元の納涼祭や隣町のお祭りとは違う、規模の大きい祭りに圧倒されていた事をよく覚えている。お母さんにねだって買ってもらった綿菓子や、お父さんに担いでもらってようやく手が届くようになった七夕の飾り付けが懐かしい。
前橋の人はお祭り好きだ。その証拠に前橋には「3大祭り」と称される3つのお祭りが毎年行われている。
7月の『七夕まつり』、10月の『前橋まつり』、年明けてすぐに1月の『前橋初市まつり』。
どれも同じ前橋の中心商店街あたりで行われるが、8月には日本一の流域面積をもつ利根川の河川敷で「前橋花火大会」もある。利根川に映える花火が幻想的だ。
その他にも夏は各自治体が納涼祭をおこなったりと、とにかく祭りが多い。夏真っ盛りになったらいつでもどこでもお祭りをやっているイメージだ。ちなみに、ぼくたちの故郷の宮城村の納涼祭では花火も上げる。なんとまぁ気合いの入ったことだ。
子どもの頃はどれも一緒に思えたし、「人がいっぱいいて嫌だなぁ」なんて思ったりもしたが、なんだかんだ行ってしまえば楽しいのがお祭りである。
最近は『人が減ってきたよねぇ』と商店街の人たちは嘆いているが、2004年を皮切りに群馬県の人口は減少しているのだからそれも仕方がない。田舎には田舎のやり方があるし、やっぱりまったく身動きが取れないような、人がいっぱいのお祭りは嫌だ。それよりも、ゆったりまったり楽しめる今のお祭りのほうが好きだ。これからもずっと前橋は祭りを通して街を見ていくのだと思う。
そして、今回はそのゆったりした祭りの中でも特にゆったりしている(悪い意味ではない)「馬場川通り」にある『喫茶マルカ』さんの前で出店をさせてもらった。
出店したチーム名は、『slowmore』だ。
2.IRORIのフードチーム slowmore
slowは「ゆっくりとした」、moreは「より」「もっと」という意味で、それを掛け合わせて『ご飯をちゃんと味わえるように、もっとゆっくり食事を楽しんでほしい』という想いを込めてこの名前をつけた。
また、世の中には『スローフード』(slow food)という言葉がある。コンビニやチェーン店の料理などのように、「とりあえず直ぐに食事を済ませるファストフード(fast food)」とは反対に、「その土地の食材や食文化を大切にして食事をする」ことだ。食材そのものを指す事もある。
ただ食べるだけじゃなくて、『どこで、誰が、どうやって作ったのか』を知ってから食べると、味は全然違う。IRORIで農業体験をすすめている理由の1つも、このスローフードという考えをまだ知らない人がいたらぜひ知ってほしいからだ。
その「スローフードをもっとみんなに知ってもらいたい」という想いも名前に込めた。
slowmoreはそういった想いの元、大切に共有していることがある。
それは『生産者も、消費者も、提供者も、みんなが幸せであること』だ。
生産者
生産者である農家さんでは「味は一緒なのに売れない商品」というのが必ずある。少し傷がついていたり形がキレイじゃないだけの野菜や、食肉を加工したときに出る歩留まりや、濃すぎて商品化できない初乳などがそれに当たる。
そういう売れない商品を自分たちの手でもらってきて、調理して売る。
食材の多くは、命だ。みんな生きている。せっかく生まれてきてくれたのだから、形が悪いぐらいで捨てるなんてもったいない。農家さんからすれば使えないものでも、僕たちからしたら宝の山なのだ。
消費者
消費者というのは、買ってくれる皆さんのことだ。せっかく作っても買ってくれなきゃ報われない。だから消費者の人に喜んで買ってもらうために、ぼくらは情報の提供を惜しまない。
どこでどうやって取ったのか、どう料理したら美味しく食べられるのか。
そんな情報も一緒にして、食べた後や食材を買ってくれた後にも楽しみが残るようにする。
提供者
3番目の提供者とは、もちろんぼくたち売る側の人間だ。やってる側が楽しくないとやる意味がないと思っていて、それは東京での販売のときを見てくれたらわかりやすいかもしれない。
野菜バトルなんて、他でやったらまず怒られる。今は、赤城古民家IRORI場で宿泊部門を担当する僕たち2人と、東京の有名イタリアンレストランで5,6年修行してきた同い年の男の子と、計3人で運営している。これから増えるかもしれないし、減るかもしれない。
もしやりたい人がいたらぜひ一緒に笑って仕事をしたい。
3.朝の収穫
この日も天気はくもりだった。朝早く起きて、まずは目の前の太陽農産に行った。前にニンニクの収穫作業をお手伝いさせてもらった農家さんだ。
今回は前に収穫したジャガイモをもらった。けっこう前に取ったからサイズはまだ小さいけれど、ふかして食べたりスープに入れたりなんでもできる。
周辺になっているいい香りのミントも摘んで、袋に入れてもっていく。
そこからIRORIで3人集まって、いつもお世話になっている長谷川農園さんへ。連日の雨で大きく育ちすぎたズッキーニを取らせてもらった。
さらに長谷川さんのご好意で、立派な玉ねぎやバジル、ミニトマトやオクラ、かわいい丸ナスなども頂けることになった。
ぼくたちが少し遠慮していると、「コンテナ貸せ」と言って、そこに大量の野菜をドカドカと入れてくれた。豪快な野菜の滝で、ぼくたちのコンテナはすぐいっぱいになった。ほんとうにいつも優しくしてくれる長谷川さんには頭が上がらないけれど、これからの働きで返していくことを胸に刻んで、有り難く頂戴した。
4.仕込み
10時すぎに街中に着いた。街はもう祭りの準備を始めている。まずは料理の仕込みからだ。
仕込みの場所は「オリオン通り」にあるシェアハウスを貸してもらえた。『亀屋』という建築系の学生や社会人がたくさん暮らしている共同住居だ。いつもは居心地よくみんなで64のスマブラとかしてるキッチンに、取ってきた野菜をどんどん持っていく。
こういう場所を貸してくれる人たちがいることも、ほんとうにありがたい。前橋の街はあたたかい人ばかりだとおもう。環境に恵まれているからこそいろんなことに挑戦できる。最高の環境だ。
料理の仕込みは手島とシェフにお願いして、栗原は出店準備へ向かった。
5.出店準備
「亀屋」から『喫茶マルカ』へは、歩いて3分。栗原が前に街中で働いていたときからずっと通っている、ゆったり落ち着ける喫茶店だ。(喫茶マルカ https://m.facebook.com/kissamaruka34/)
とても気さくで優しい女性店主のみよさんが1人で切り盛りしている。
着くなり「私、着付けしてくるから出ていい?」と言われるあたり、とても気さくだと思う。でも亀屋から運んでくるの大変だろうからと台車を貸してくれたり、ぼくたちが提供したい飲み物の発注も代わりにしてくれたり、
ほんとうに優しい、頼れるお姉さん的存在だ。
時刻はもう11時をすぎていた。少し焦りつつも、通りの人の目を確認しながら表の入口の横に僕たちのブースをつくる。テーブルを置いて、その隣に本棚を置く。白紙を持ってくるのを忘れたから段ボールにメニューを書いてテーブルに貼り付ける。即席感がいい味出してると自画自賛するが、他から見ればどうかはわからない。
この日のメニューは5つ。
・シェフの手づくりバーニャカウダ
・生いちごのシャンパン
・喫茶マルカの生ビール
・ラタトゥイユのセット
・新鮮バジルのブーケ
料理やドリンクはテーブルの上に、本棚にはIRORIのパンフレットやお持ち帰り用の野菜を並べる。「手づくりバーニャカウダ」は仕込みに時間がかかるので、
まずは「生いちごのシャンパン」と「喫茶マルカの生ビール」を売り始めることにした。
「準備は整った。いざ!」意気揚々と呼び込みを始めると、すぐに最初のお客様がきた。
生いちごのシャンパンを頼んでくれて、このいちごがどこでどうやって取れたのかしっかり説明して、お客様も笑顔だった。自分たちが取ってきたものや用意したメニューを知らない人が喜んでくれることは嬉しい。これこそ飲食店の本質だとおもう。
しかしこれもサービスではないので、しっかりとお会計をいただかなくてはならない。差し出されたのは、福沢諭吉の絵が書かれた強そうなお札。そして、そのときになってやっと、気が付いたのだ。
「あ、おつり用意してきてない」。
結局みよさんがすぐにお金を両替してくれて、事なきを得た。お客さんにはなんとか笑って帰ってもらえたが、こんな事で大丈夫なのだろうか…。
6.喫茶マルカでの販売活動
日曜日の昼間ということもあって家族連れが多かった。喫茶マルカがある馬場川通りには、その名の通り「馬場川」という小さな川が流れている。みんなその川の横を涼しげに歩きながら、思い思いのものを手に持って、楽しそうだ。
少し蒸し暑かったので生いちごのシャンパンがどんどん売れていく。
マルカの店内にも休息とやすらぎを求めて人が出たり入ったりしている。
14時過ぎになってようやく手島たちも合流し、この日の商品が出揃った。いちごのシャンパンは、飲めない方やお子様でも楽しめるように、ノンアルシャンパンだけでなく、生いちごのサイダーも追加で用意した。
「手づくりバーニャカウダ」はシェフが目の前でお客様の好みに合わせて作るやり方にした。試しに食べさせてもらったけど、ニンニクの臭みが旨味に変わっていて、野菜との相性は抜群だった。
『モノが良いからね。野菜もほんとうに美味しいし、いいものができるよ』とシェフは笑って言った。
予定よりも遅れての販売開始となったが、周りの出店とは一味違う内容に、
行き交う人々はみんな注目してくれた。目に留めてくれた人、歩みを遅めた人に声をかけて、1つ1つ丁寧に説明をした。
売れればそれでいいというものでもないし、けど売れないともったいないから、
その両方の想いを乗せて、言葉に気をつけて呼び込みをした。
バーニャカウダはオヤツの時間にしてはかなりの人気で、みんなおいしいと言ってくれた。食べてみて、野菜の味を知ってみて、気に入ってくれた人たちが帰りに野菜を買ってくれた。
形が多少悪くても、おいしいものはちゃんと売れる。そのことが少しずつ証明されていって、やりがいに満ちていた。
夕方には料理はほぼ売り尽くされて、夜に差し掛かって始めた値引きセールでさらに売れた。自分たちが0から育てたわけではない野菜たちを値引きするのは本当に心が痛んだけど、誰かの手元に届いてほしかったから精一杯声を出した。
そして売り切った。 20時ぐらいには片付けもぜんぶ終わった。 みんなの顔には疲れと、やりきった充実感が映えていた。 楽しい時間はほんとうにあっという間だった。
結果を伝えたら長谷川さんも「それだけ売れれば上々だ」と褒めてくれたことが嬉しかった。
7.おわりに
出店中、亀屋の住人たちやイベントのスタッフさんたち、街中で仕事をしている方たちも来てくれて、ぼくたちのチャレンジを賞賛してくれる声ももらった。 やっている事やこれからやっていくことを認めてもらえるのは、やはり嬉しい。
前橋は新しく挑戦する人に優しい文化がある。 だから、移住者や他所から来た人たちにも手厚く当たるのかもしれない。 改めて、ほんとうに暮らしやすい街だとおもった。
販売を振り返ると「これでよかったのか、もっとできたんじゃないか」、 そんな想いはどうしたって残る。 けれど、それは次の回に活かせる。
次は7/20(土)、ぼくたちのIRORIで「農窓市(ノマド市)」をおこなう。 そこでもまた全然違う料理を出すので、手伝ってくれる人がいたら嬉しい。 みんなでいい仕事ができたらいいなとおもっている。
関わるということ
様々な人の思いや頑張りが形になっていく様子が伝わる記事でしたね。一生懸命取り組んでいる人の姿や言葉には心打たれます。
余談ですが、今回の記事に写真が少ないことから、本当に必死に取り組んで撮ってる暇なんてなかったんだろうなと想像しました。ここ1年ほど、活動の際には常にカメラを構えている私ですが、活動が写真に残ることの大きな役割を感じています。
「写真を撮ってあげたい」これも1つの関わり方なのかなと思います。
この記事を読んで、役割を感じたらぜひ一度関わってみて欲しい。手伝って欲しいことはきっと山ほどあるはずだから。
喫茶 マルカでお茶
後日、静けさを取り戻した喫茶マルカさんにお邪魔した。
突然お邪魔したのにもかかわらず、村井さんはお店の話、前橋の観光の話、食の話、、、いろいろなことを教えてくれた。前橋を楽しみたい人がここに立ち寄って、地元じゃないと聞けない情報を手に入れられる場所にしたいのだという。
「あ、アイス溶けちゃいますよ!」と言われるまで話し込んでしまった。また、前橋に居場所が一つ増えた。