高校生と小説家になる夢
精華学園高等学校は小さな高校です。
だからこそ生徒に「制度」や「ルール」を理不尽に押し付けるよりも「生徒の気持ち」から発想したいと考えています。
今回は「小説家」に夢を描く生徒の話。
1.一流の言葉を聞く
これから小説家になりたい人と小説家になった人とベテランでは見えている景色が違います。
99%の凡人は素人側から見て「こうすれば良いらしいよ」というガセネタを信じて頑張ります。一方で実際に夢を叶えた人は別の景色を見ているのです。
だからこそ生徒には一流と同じ景色を見て欲しい。それが精華学園高等学校 町田校の重要な理念の一つになっています。
2.誉田龍一先生
2006年に小説推理新人賞を獲得し、プロの小説家として活躍している誉田龍一先生にお時間をいただきました。
時代物を中心にミステリーや児童物も執筆している先生に小説家になる道筋や生徒が書きかけた小説へのコメントなどを頂く機会を作ってもらいました。

3.リアルな作家たち
生徒が興味がある作家「東野圭吾」「村上春樹」・・・と名前をあげるたびに「ああ、あの人はね・・・」とエピソードが帰ってくる。カリスマたちの作家としての日常を知れば知るほど魅力が増す。リアリティが増す。
小説家にはいろいろな人がいるけれどね、、、
全員に共通しているのは、、
本をものすごくたくさん読むことなんだよ!
「何冊くらいですか?」
「300冊くらいかな。月に」
気負うでもなく、大袈裟でもなく、「カレーライスが好きです」という言葉と変わらないくらいの当たり前な感じで、誉田さんが言う。
1日10冊ペースで本を読んでいるのに自分の作品も書くという。死ぬ直前まで読んでいる人もいる。という。
ああ、好きじゃなければ到底できないな。
それ以外にも西村京太郎の観察力。
東野圭吾の挑戦する力。継続する力。
それらを銀座の飲み屋のお店の名前が出るくらい詳しく教えてくれる。それ自体が小説のようでもあった。
事実は小説よりも奇なりである。
4.生徒が書いた作品にも
生徒が書いた作品にもアイディアをどんどん教えてくれる。そのままメモを取ったら作品ができてしまうかのようだ。
10000字なら作品が書けるが10万字を超える作品にそれを広げるのが難しいという生徒にプロットの作り方や10000字の作品に加えたほうが良い背景やサイドストーリーなどを詳しく教えてくれる。

舞台の8幕構成を引き合いに出しながら、小説全体を8分割して説明してもらったので、「8回10000字を書けばある程度の作品になる」という道筋を見せていただいた。
5.1時間の約束が
1時間の約束が2時間を超えて話し続け、気が付いたら喫茶店の閉店時間に・・・・
それだけでもありがたいのに「作品ができたらまた見せてください」と誉田先生から申し出てくださった。
自分一人で作品を作り始めた高校生にとって一流の小説家に見てもらえる機会などそうはない。でも、それは怖いことでもあるし、勇気付けられることでもあるだろう。
これを超えた彼がどれだけ成長するかが楽しみだ。
6.小説家ではなく人生の師匠
小説家になるためのコツをお伺いしていたはずが、誉田先生の口から出てくる言葉は「生き方」そのものだった。
1)たくさんの本を読むこと
2)アンテナを張ること
3)悪いことでもネタ化すること
4)毎日少しでも書くこと
5)最後まで書くこと(序盤の練習を繰り返していてもダメ)
6)様々な経験を自らすること。経験がないのにアイディアが降ってくることはない。
7)学校の授業がガイドラインになることも多い
8)些細な服装、仕草なども観察すること
9)つまらない内容でも世に出せる力も大事
まさに今の若者に足りない挑戦する力や自分で経験する力、観察する力、やりきる力などが小説家としても大事だと教えてくれた。
生徒が帰りに「小説に関係があるもの」に限定せずにいろいろな職業、生き方、人が見たい、というようになった。
これがどれくらい大きな変化かわかるだろうか?
10人の生き方を彼が見に行ったら人生観が変わるだろう。
100人の生き方を見たら、もう怖いものはないかもしれない。
とてもありがたい教育を誉田先生にしていただいた。
これからのその生徒の変化がとても楽しみだ。