通信制高校の合同相談会で講演@福岡
通信制高校・サポート校の合同相談会に登壇させていただいた。ふだんから中高生と関わりながら「学校に行けない」「学校に行きにくい」「勉強する気にならない」「自信がない」「外出が難しい」という悩みと向き合って気づいたことを多くの中高生、保護者にお伝えすることができた。
1.涙
講演が始まって、僕自身がひきこもっていた頃の話やその時の母の様子・父との関わり・医者・先生の話を聞きながら最初は大きくうなづいていた人たちが涙を流し始めた。
会場はパワーポイントを使っているせいで暗かったけれど、となりの人の泣く声につられて、涙を流す人の輪が広がっていくのが見えた。
2.頑張っているのに伝わらない
生徒たちは頑張ってひきこもっている。 それが親には伝わらない。 親も一生懸命に悩んで頑張っている。 それが子供に伝わらない。 ひきこもりの一番つらいのはこの点ではないだろうか?
通信制高校・サポート校の合同相談会には保護者だけで参加している人が多い。本人はおそらく家にいるのだろう。 そして、どれだけたくさんの学校のパンフレットをもらっても、本人の気持ちを変えることは難しい。
パンフレットの渡し方を間違えれば、 本人の小さな小さな努力を否定して、違うものを持ってきたように見えてしまう。
「学校に行っている」という形式だけ整えば、僕の気持ちはどうでも良いのか?
親からしたらそうではないのだけれど、子供からはそう見えてしまうことも少なくない。
3.8050問題
80歳の親が50歳の子どものひきこもりを支える。 これが今の日本の現状だ。 中高生の不登校がそのまま大人のひきこもりになるケースも少なくない。
だからこそ、保護者は必死だ。 数年、 さまざまな支援機関に相談を続けても 「本人が出てこないことには・・・」 「まず親が変わることですよ」 「様子を見ましょう」 「育て方が悪かったですね」 と言われるだけで誰も本気で関わってくれない。
それならば、家で暴れたりせずに暮らしている今の状態を維持していた方がマシ。と考え刺激することをやめてしまう。
僕自身はひきこもり当事者だったから自分のつらさ、疎外感、恐怖心などはよくわかるが、それを親身になって保護する人は社会と関わりながらひきこもり当事者と同じような立場に立っているのだ。
社会がひきこもりを疎外したり、非難するその衝撃を直接受けているのは多くの場合、保護者なのだ。
4.兄弟に連鎖する
兄がひきこもり始めると弟も生活リズムが乱れてくる。
ゲームをして家にいても許されると分かれば、学校に行く気持ちが持続できないのもわからなくもない。 そして、 兄弟の連鎖だけでなく、社会全体でも連鎖が起きる。
全日制に通っている友人に通信制高校の生徒が営業をかける。集客に一生懸命な通信制高校は「友達を誘え」と生徒にいうからだ。そうやって、本来引きこもっていなかった生徒も通信制に通うようになる。
ネット上には ひきこもりを擁護する書き込みがたくさんあるし、仲間がたくさんいる。そうやって、ひきこもりが市民権を得るようになっていく。
5.参入障壁
一方で資本主義のルールでまわっている社会・特に経済は他者が簡単に仕事を奪えないように「参入障壁」を高くする。 確かに同業他社が入ってこられなくすることはビジネスの戦略上では重要だが、働く側、これから社会に出て行く人たちが「入りにくい」ということでもある。
また、ある業種でうまくいかなくなった人が他の業種に移ることもできない。大学に行って、勉強し直して、資格を取らなくてはいけないかもしれない。
6.つまらない生活を強いられる人たち
人生は面白い。リアルは面白い。 そこに人は役割があるし、生きがいがある。 もう少し分かりやすく言うと「困難」の類はゲームでいう「クエスト」「ミッション」なわけで、それを避けるようになってしまったらゲームは楽しめない。
それが学校ではないかと僕は思う。 勉強を頑張っても 「あなたのためだから」 と言われて20年。 何があなたのためだったのか? まだわからないまま迷子になっている人は東大生の中にもたくさんいる。
真面目に頑張り切ったのに人生が見えてこない教育を受ける前に考えておくべきことがあると僕は思う。