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不登校・ひきこもり 家庭訪問スタッフ養成講座

 2019/12/09 今日の「椎名雄一」
この記事は約 9 分で読めます。 1,089 Views

不登校・ひきこもりになる人が増えている中で「ひきこもり支援」をする病院、学校、施設などが徐々に増えています。ところが、、、

1.ひきこもり当事者がこられない

「不登校・ひきこもり」をテーマにした勉強会や合同相談会などの参加者の顔ぶれを見ていると9割がたは「ひきこもり当事者」ではなく、「保護者」「関係者」だ。

そして

「本人に会えたら良いのですがね」
「来ていただけたらなんとかなるのですが」
「まずはお家の方が頑張るしかないですね」

と言われてしまう。「不登校・ひきこもり」が問題なのに家から出られないと解決しないというのだ。支援・サービスを提供する側としては「施設で待っている」というのが限界なのかもしれない。

実際に5年10年20年とひきこもりの子どもと向き合ってきた保護者が今更できることはあまりない。そればかりか保護者の血の滲むような数え切れないくらいの努力を否定するかのように安易なアドバイスをする人もいる。

「そんなことは不登校・ひきこもりの最初の頃に試したよ」

そう思うようなアドバイスだ。

場合によっては「育て方が悪かったですね」と言われてしまう。傷つく言葉だというのはもちろんだが、落ち込むだけで助けにならない言葉だ。

そうこうするうちに保護者は疲れ果て、ひきこもり当事者は安定的に引きこもるようになる。

2.ひきこもり当事者に会えない家庭訪問

最近では「訪問医療」「訪問介護」などとして専門家が家庭訪問をする機会も出てきた。しかし、「ひきこもり当事者」からしてみたらもはや誰が訪ねてきても会いたくない。という状態が少なくない。診断書がどうしても必要な場合ですら「ひきこもり当事者」には会えなこともある。

それほどまでに「ひきこもり当事者」とか変わるのは難しいのだ。

3.病院・学校・支援施設・保護者からの要望

近年では「誰かが家庭訪問をしてひきこもりの人と接触できないか?」と依頼されることも多くなってきた。肩書きがしっかりしている医師などは小回りがきく対応をするのが難しい。医療行為ではないのに家庭訪問することもままならないからだ。

私たちは要望を受けると「本人の性格、好き嫌い、生活リズム」などを詳しくお伺いする。「ゲーム仲間」として関わった方が縁を作りやすいのか?電気屋さんとして家に関わった方が良いのか?保護者の生命保険の担当者が良いのか?などを検討するためだ。

報告義務がある資格があるとそういう動きはやりにくい。
しかし、そうではない私たちの強みは「ひきこもり当事者」の個人的な性格や世界観にあった対応ができることだ。保護者と綿密に相談を重ね、世間体やさまざまな規制とは関係なく関わることができる。

例えば、最近、ポケモンが新しく発売された「ソード」と「シールド」
それぞれのゲームでゲットできるポケモンは同じではない。ソードにしかいないポケモンとシールドにしかいないポケモンがいるのだ。もし、持っていないポケモンを持っている知り合いがいたら、、、「会ってみたい」と思う人は少なからずいる。100%の方法とは言えないが確率は高いし、不登校の中高生でこの誘いに反応する子は今週だけでも4人いた。ポケモンを持っていけばドアが開くのだ。

そんなきめ細やかな対応が認められてか、最近家庭訪問の依頼がどんどん増えてきた。10人の不登校・ひきこもり当事者の保護者と面談すると7、8人は家庭訪問を依頼する。

4.最難関は「であいかた」

不登校・ひきこもり支援で最も難しいのが「であいかた」だ。

ちなみに次に難しいのは「戦略」(1mmずつ前に進む戦略がないと「ただ休ませる」「ただゲームをさせる」「ただ叱りつける」といった行き当たりばったりの対応になってしまう。また、医師、カウンセラー、支援員などは積極的な対応をして問題が起きると責任を問われるが消極的な「様子を見ましょう」のような対応では問題を問われにくいので基本的には保守的な対応を選択する)

私たちは過去10年近くかけて、「であいかた」を現場で試行錯誤してきました。実際に保険の代理店で勤務している家庭訪問スタッフなら「お父さんの保険の契約」として家に出入りすることができます。(そういうメンバーがいます)料理が好きな子の家には調理師の免許を持って、一緒に料理を楽しめる家庭訪問スタッフもいます。芸術家、作曲家、アクセサリー作家、、、一芸がある人が家を訪問すれば「であえる」チャンスは増えてきます。

3回目でであう

1回目で無理に紹介されても信頼関係を最高潮に高めることは容易ではありません。しかし、3回目を目標に徐々に距離を詰めて、信頼してもらうことは可能です。1回目は「自分をターゲットとした来客ではない」と思ってもらうことも重要な手順であることもあります。(1回目ですんなりということもあります)

オープンダイアローグ

無駄と思える訪問をしたときにでも保護者と会話をすることはできます。そのときの会話の内容や雰囲気、関わり方などは「家の雰囲気」を変え「ひきこもり当事者」の心理状態を少しだけ変えます。そのときに使うのがオープンダイアローグの手法です。

家庭訪問スタッフが玄関やリビングで保護者と会話をする。

その内容は直接的か間接的かにかかわらず「ひきこもり当事者」に影響を及ぼします。2回目、3回目の訪問のときに今まで一度も顔を見せなかった人が「前回の話題」に関連したテーマで関わってくることは非常に多いのです。

5.関わり方

人と人とが向き合えば強烈なエネルギー交換が生まれます。気を使い、心理を読み合い、自問自答や自責の念を募らせて、緊張して、多くの「ひきこもり当事者」は疲れてしまいます。

でも、一緒に犬と遊ぶならエネルギー交換が間接的になりエネルギーの消費が抑えられます。何かを介した関わりを「三項関係」と呼びますが、その工夫をすることでスモールステップをたくさん作ることができます。応用行動分析などを活用した関わり方で無理なく距離を詰めることで不思議なくらいにあっという間に仲良くなることができます。

6.ひきこもりからの脱却

家庭訪問スタッフに「ひきこもり当事者」が慣れてきたら、動きを出すこともできます。「最近こんなのはやっているんだよ」とか「新しいゲームやろう」と主導権を徐々に家庭訪問スタッフ側にすることで「外出」「就労」「通学」などに対しても道を作ることができます。

この辺りは非常に重要なノウハウなのと記事を読んで安易に真似をされてもうまくいかないことなので内容は割愛します。

7.家庭訪問スタッフ養成講座

今回、「不登校・ひきこもり当事者」への家庭訪問の依頼が増えてきたことや広域化してきたことを受けて、家庭訪問スタッフ養成講座を開催しました。

第一回なので身近な知り合いが受講してくれればと思っていましたが、蓋を開けてみたら20人もの方が受講してくれました。それも就労支援の方やタクシーの運転手、講演業の方からひきこもり当事者だった方、現役の高校生など多種多様な方が集まってくださいました。

スタッフの多様性は対応力にもつながります。

実感を伴う養成講座

講座の序盤は10代から60代までいる受講生が一瞬で仲良くなるワークをやりました。講座開始、10分ほどで距離が一気に縮まった体験をした受講生は「不登校・ひきこもり当事者」との距離を詰める方法を体験的に学ぶことができたようでした。

10時開始で昼休みには

さすがに知らない家庭に通ってでも役に立ちたいと考えているみなさんだけあって、2時間ほど一緒にいただけで仲良くなり、町田のランチを楽しみました。

大らかな人たちが多い養成講座

「同じような価値観」「同じことを大事だと思える」ということが大事で、何ができるとか、何をするしないとか細かいことで人を裁かない。という信念の方がほとんどでした。多くの企業では「できない人はいらない」という基準を持っていますが、「できない人も仲間」と思えることは家庭訪問スタッフの最初の一歩として大事な要素だと私たちは考えています。

だからこそ、「価値観を大事にする人たちでよかった」そう感じました。

8.家庭訪問を希望される方に

家庭訪問スタッフ養成講座は2月11日の講義が最終日です。

それ以降に都内近郊で家庭訪問を希望される方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください。

1)家庭訪問のやり方を考える

「であいかた」が最も難しく、慎重さを要するプロセスです。どのようにであったらよいか?何が好きなのか?何が嫌なのか?家族関係や過去のうまくいった事例、リビングの配置や部屋とリビングにいるそれぞれの時間帯、好きなゲームやプレイスタイルなどから「ひきこもり当事者」の性格を分析し、最適な「であいかた」を検討します。

うちは多分「あいたくない」というから

99%のご家庭はその状況です。それを上手にかいくぐるのが私たちの役割ですので、100%とまではいきませんが、ほとんどのケースで「意外にあっさりあえました」となります。なぜなら、口ではなんと言っていても「できそうなら出口に向かいたい」とほとんどの「ひきこもり当事者」は思っているからです。

2)三顧の礼

「三顧の礼」という言葉がありますが、いきなり訪ねて行って仲良くなろうとしても、、、仮にその場は意気投合しても、、、深い信頼関係を作るにはもう少し時間がかかります。3回くらい通う中で「この人は安心できる」「この人とはゲームや料理、バトミントン、、をしてもよい」となるようにしていきます。ここを慌てると出会えても「我慢して会う人」のようなカテゴリーに入れられてしまいます。

3)戦略

ゲームなどで仲良くなったとしても本当のゴールは「自立して生きていくこと」です。であえたから腫れ物に触るように「あとは遊んでいればよい」というわけではないのです。

就労などの出口までの導線を考え、「ひきこもり当事者」の価値観の変化や気持ちの揺れを1mm単位で観察して、隙を伺います。「今この瞬間なら外出できるかも」というタイミングを見極めて、目に見えない少しずつ戦略通りに話をずらしていくのです。

多くの支援者は「安定した関係が壊れないように」と考えるので保守的になってしまい、結局、5年10年とひきこもりを長引かせてしまいます。逆に強引な支援者は無理なことをさせて関係性を壊すだけでなく、二度と誰も信じないような状況を作ってしまいます。

私、椎名雄一は30歳まではひきこもり当事者です。
私の周りにはそれに似た経験をして、今は元気に活動している人がたくさんいます。つまり、戦略的にどのように関わったら脱出できるのかを知っているのです。

ご相談は

info@shinri.online

までお願いします。

9.家庭訪問スタッフ養成講座の見学

12月14日 1月18日 の10時〜17時の時間に「家庭訪問スタッフ養成講座」を開催します。

様子を見学したい方は上記の期間の中で1時間だけ見学をすることができます。受講したい方は30,000円(税込)受講できます。上記の期間終了後は60,000円の定価に戻りますので、半額で受講できるのは最後のチャンスです。見学をしたい方は5,000円(税込)で1時間だけ参加できます。

講座は2回で完結します。
12月14日 1月18日は同じ内容で1日目に相当します。
2月11日に2日目を開催します。

参加希望の方は

info@shinri.online

までご連絡ください。

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yuichishiina

yuichishiina

精華学園高等学校 町田校舎長・一般社団法人 日本心理療法協会代表理事・NPO法人ユメソダテ 理事 など。悪い人がいるのではなく、理解し合えていないことが問題。と人と人との心をつなぐ活動を展開中。

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