管理職の孤独
会社や組織をひとつの大きな船に例えると「船長」や「航海士」がいたり「漕ぎ手」や「食事係」「掃除係」のようなさまざまな役割の人が関わっていると言えます。
1.見える範囲の違い
良い経営者、管理職は部下の細かいことにまで目が行き届きます。それは「船長」が「食事のメニュー」や「掃除道具」にまで気を配っているようなものです。そういう上司がいる職場では確かに職員は働きやすいかもしれません。
しかし、重要なことが多くの企業・組織で話題になりません。
「食事係」は「船長」の何を知っているのか?
「船長」にも役割があります。
そもそも「船長」がミスをしたら大変なことになります。その重責を誰が把握して、気を配ってくれるでしょうか?多くの場合「船長なんだから!」と片付けられてしまうかもしれません。
多くの組織では「上から下」には過剰なくらいにケアが求められる一方で「下から上」にはケアどころか気づかない人が多いのです。そうやって、経営者や上司を不必要に疲弊させたり、看板に泥を塗ってしまうケースが良くあります。
2.多様性の弊害
ひとつの答え、画一化されていた社会だった昭和から多様性の変化してきた平成。人々がたくさんの価値観を持つことは素晴らしいメリットがある一方で管理職を悩ませます。
ある社員が問題を起こしたとしたら
- 誰にでもミスはあるものだから許してやるべきだ
- 二度と同じ問題が起きないように厳重注意すべきだ
- そんなミスを起こさせる職場環境を変えるべきだ
のように多様な意見が出てきます。管理職はどの答えを採用しても責められるのです。
3.「褒めて育てる」の弊害
最近の教育業界のブームは「長所を伸ばす」「褒めて育てる」「欠点を理解する」のような方向性です。こんな風に教育されてきた人たちは企業になかなか馴染めません。
- 「僕は褒められないとやらないタイプです」と平然という若者
- どの会社に行っても「パワハラ」だという打たれ弱い子
- 「褒めて褒めて」アピールがやたら多い若者
学校の先生と保護者は「褒めて育てる」をしてくれるかもしれませんが、企業はそういう場ではありません。経営者や管理職は「ママのように褒めてくれる」ことを求められたら仕事になりません。「ママのようにあなたを理解する」のが仕事ではないのです。と言えずに頑張っている管理職の多いこと。
4.少しの知識が助けに
多くの管理職はそんな状況でも自分なりに工夫して、部下と関わり、理解しようとしています。せっかく縁があった若者が定着するように本当によく勉強をしていると思います。
私は高校の校長先生ですから数年後に世に出てくる若者の特徴をよく知っています。今年の新卒とは全く違う文化の若者が来年は排出されてきます。その新しい文化のポイントをわかりやすく知ることができれば管理職の負荷も少しは減るのではないでしょうか?
5.管理職の小さい声を聞く
管理職は「偉い」「権限がある」だから声が大きいと思ったら大間違いです。SNSでいつ悪いことを投稿されるかわからない。部下をやめさせずに働かせるのが難しい。そんな環境にいる彼らは小さい小さい声で「困ったな」ということはあっても「これがおかしい」「こうしたほうがいいのに」「こいつら・・・」とは言えません。それこそすぐにパワハラと言われてしまいます。
多くの企業で私が研修前にさせていただくのは経営者や管理職の声を聞くことです。「バイトの待遇」をよくすることをやりたくない経営者はいません。でも、「バイトが看板に泥を塗ったら・・・」その泥を落とすことが優先です。
バイトが看板を大事にするようになると経営者や管理職にも余裕ができて、「バイトの待遇」を考えられるようになります。
そんな心と心をつなぐのが私の仕事です