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さとこもりプロジェクト(LUMINE-群馬県赤城南麓)

 2019/10/06 今日の「椎名雄一」 里こもりプロジェクト
この記事は約 11 分で読めます。 2,678 Views

5月に前橋市の人たちと出会ってから、LUMINEさんでの野菜販売や長谷川農園さんでの農業体験など様々なことをしてきました。

それは都会にいる61万人の大人のひきこもりや不登校の生徒、休職したばかりのグレーゾーンの人たちのリハビリの場を作りたいと思ったからです。

皆さんのお力をお借りして、それがだんだんと形になってきました。

今日は9月末から10月にかけての活動の報告とともに「さとこもりプロジェクト」の概要をお伝えしたいと思います。

1.オンライン仲間と役割

家から出られない事情があったり、ひきこもり状態でもゲームやSNSはできる人がたくさんいる。そして、そういうオンライン環境に接続することさえできない人がいる。

ひとりでひきこもっている人の「ゲーム仲間」「SNS仲間」になれる人がいたら、その人はひとりじゃなくなる。

高校生が描いてくれた
ホワイトボード画

さらに家から出られないし、ゲームしかしていないひとに役割を作ることができる。「ゲーム仲間になる役割」を手にしたひきこもりは自然と社会とのつながりを探したり、就労を考えるようになる。「ありがとう」と言われるからだ。

2.家庭訪問・カウンセリング

ひきこもっている人のなかでも家庭訪問をしてもらえれば人に会える人もいる。安心できる自宅で一緒にゲームをしたり、動画を見たり、趣味をしたり、料理を作ったりしながら仲間をひとり作る。それが家庭訪問だ。

家庭訪問スタッフは現在4名ほどだが、家庭訪問を続けていると次第にコンビニやアニメイト、映画館などに家庭訪問員となら外出できるようになる。

それは大きな変化だ!

ネコがこっちを見てる!

3.新宿LUMINEでの野菜販売

不登校ひきこもりだったり、メンタル不全などで休職している人がずっと家にいると「家にいること」が原因で体調を崩したり、依存症やうつ病などになってしまう。

9月末に開催された「LUMINEアグリマルシェ@新宿駅」では20人を超える人が販売を手伝ってくれた。

ふつうはマルシェの店員さんは1〜2名。
農家さんが自分の野菜や果物を売るのが当たり前だからだ。

20名いるから文化祭のようにマルシェも盛り上がるし、悩みを抱えている人も夢中になって野菜を販売することで変化していく。

入れ替わり立ち替わり大勢が参加してくれた
主婦はコミュ力が高いので即戦力に!!

安心して参加できる仕組み

オクラやラディッシュを袋に詰めていると人が集まる。マルシェでは野菜を箱から出していたり、並べたりしていると人が集まる傾向があるのだ。

今回もオクラを袋詰めしている中学生のうしろから「オクラが安いです!大変です!」と叫ぶと人があっという間に集まった。

「ちょっと足して!」って言ったら彼が足します!というとお客さんが「ちょっと足して!」と言ってくれるので中学生が足す。

そこにコミュニケーションが生まれる。

最後に必ず「ありがとう」と言われる。

役割

野菜販売してくれた高校生が
描いてくれました!

ポップを書くのが上手い人。イラストが得意な人はお店を可愛く飾り付けてくれる。そんな役割もある。

女子高生の感性はすばらしい!!

お客さんの選んだ野菜を袋に詰めるのもお会計をするのも役割。

少なくなってきた野菜を補充するのも役割。

たくさんいる仲間のためにお茶を買いに行くのも役割。

大企業の偉い方も声を上げる!
まさに老若男女貴賎を問わずだ!

声を出せるようになりたい人や声を出すのが得意な人は台詞を考えて声出し係もできます。

野菜は1日350g必要です!!(新ネタ)

生徒の写真は掲載できないが、一生懸命に販売している姿は感動的だった。

障害がある方も毎回参加してくれているがそれが気になったり問題になることはない。当たり前だ。

多様な人のあつまり

中学生・高校生・大学生(東大生)・社会保険労務士・恋愛講師・製薬会社・大手外資系の金融会社・作家・主婦・教師・カウンセラー・農家・古民家ゲストハウスオーナー・マッサージ・焼き鳥屋など様々な人が手伝いに来てくれた。

不登校・ひきこもり状態の人や障害がある方もいたが、誰一人仲間はずれになることもなく、10代から60代までが一つの塊になっていた。

ベテランで慣れてきている人は戦力に!

そんなやり方をしているせいもあって、
マルシェの後半は店舗の垣根を越えて、出展者同士が協力し合い、声を出し合い、「ぶどう屋さん」が長谷川農園のズッキーニを売ってくれたり、菅平高原の農家と赤城山麓の長谷川農園がコラボする場面もあった。

懇親会でコラボを企む
本来はライバルであるはずの2人
俺たちガチ勢だからな!!!

ルミネアグリマルシェという単位で一体化した瞬間だった。

店も年齢も性別も関係ない
全員が楽しいことが好きな人間だ!

ルミネアグリマルシエhttps://www.lumine.ne.jp/agri/

体験して欲しい

必死で工夫して、汗をかいている人と仕事をすると駆け引きをしなくなる。

「自分がサボっても大丈夫」のような発想をするのはその仕事や勉強が楽しくないからだ。超盛り上がった文化祭のような場では誰もサボらない。自分ができることをやって、自分のペースで堂々と休む。

「仕事のやりがい」「勉強のしがい」というのはこういうところにあるのだと感じる。

みんなで相談!どうしようか?

1.大声で叫びたいからネタが欲しい!
2.「菅平高原野菜のうんちく」を質問する
3.使えそうなキーワードやうんちくを集める
4.「標高1500mで育った新鮮な野菜です!」のような言葉を考える
5.叫ぶ

どんどん勉強して、どんどん使っているので、誰も退屈だとか大変だとか考えていない。ただただ、喜ばれるのが楽しいからだ。

書いていて思うのだが、やっぱり当たり前のことだ。

使える知識・使える工夫は楽しいに決まってる。

参加したほとんどの人がいう言葉がある。

「こんな楽しいの初めて!」

野菜販売や後述する農業は決して楽な仕事ではない。僕も「キャベツ200円です!!」とずっしり重いキャベツを片手で掲げていたので4日経った今でも痛い。

それでもなぜ、全員が夢中になって参加するのか?

「30分だけ」と言っていた人が閉店まで残っているのか?

目の前で喜んでくれる人がいる

これがお金よりも規則よりも大事だからではないかと僕は思う。

覚醒

販売をしていると覚醒する人が出てくる。

「あんなに声出せる人だっけ?」「すげー才能持ってんな!!」「ひきこもり。。もうやめたの?」と声をかけたくなるような人が次々に出てくる。

役に立ちつづけるハイテンションの中で今まで体験したことがないことを頑張る。もしかしたら生まれて初めて全力を出した人がいたかもしれない。

学校の勉強や多くの仕事は喜びがない

「喜び」が目に見える仕事は人を覚醒させる力がある。自信がつく、創造性がます。気配りができる。思いやりある行動が増える。

うーん。くどいけど、あたりまえだ。

4.そして、群馬県赤城南麓へ

服の色合いといい
なんて素敵な写真なんだ!

野菜を販売すると「売れる野菜」「喜ばれる野菜」がよくわかる。これで畑に行くとテンションが上がる。宝の山に見えるからだ!!

そして体験してみると自分自身が見えてくる。

喜びの連鎖

ズッキーニがやたらでかい!

上の絵を見てほしい。ここまで掲載した4枚は「さとこもりプロジェクト報告会」の時に野菜販売に参加した高校生がホワイトボードに描いてくれたものだ。

この絵にどれだけの「ありがとう」が隠れているか?想像できますか?

  • 報告会の主催者としてこんなに嬉しいことはない
  • イラストのモデルになった女性も嬉しい!
  • 絵を描いた本人も喜ばれて嬉しいし、自信がつく
  • 高校生の保護者が喜んでくれる
  • 保護者から連絡を受けた教員のテンションがあがる
  • さとこもりに参加した人たちが自分の歩いた道を思い出して感激する
  • 指導してくれた農家さんや地元のゲストハウスの人やスタッフが喜ぶ
  • ルミネで関わって、「100円でーす」と叫んだことがある人が懐かしがって喜ぶ。累計60人。
  • ルミネの担当者も若者に良い影響が出ていることを喜ぶ
  • 描きやすいようにホワイトボードを真っ白にしてくれた人もいる。
  • 週が明けたら学校が始まって、生徒たちが「この絵かわいい💕消せないね!」と盛り上がる。
このホワイトボードいっぱいに絵が描けるようになったら将来は(すごいユメ・まだ内緒)をやってみたい! 絵を描いた高校生談

ユメがしっかりしてくることが何よりも嬉しい!

特別な朝

ラジオ体操をしよう!という。
ラジオ体操は今時当たり前ではない。

農業を始める日の朝は何かが違う。「これから身体を使う」そう感じた身体が何かのスイッチを入れるのかも知れない。家では決して入ることのない清々しいスイッチが入る。

わかりやすい農業

思ったよりもできそうな
簡単で負荷の少ない指示が飛ぶ

タイヤの大きな台車にカゴを乗せて押していく。ズッキーニを収穫して、売れる形に整えてカゴに並べる。傷がつかないように置く向きに気を使う。

あとは

  • 見逃さないようにゆっくりと
  • 怪我をしないように気をつけて

そんな感じで作業が始まる。ズッキーニ収穫は4人で頑張っても1時間以上かかる。行ったり来たりしながらすれ違うときに冗談をかわす。向かい側になった時に「それ、お願い」と遠いやつを取ってもらう。

「耕す」デビュー

マニュアルの免許あれば大丈夫だよ!
いやいやいやいや、、、、

7月くらいから関わり始めて、ようやく耕す係に!

何百年も続いている長谷川農園。庄屋さんが持っているノウハウは奥が深い。やったらやっただけ新しいことを教えてもらえる。

夢中になってとりくむ

  • 会社が嫌だ。元気が出ない。
  • 学校が嫌だ。通えない。
  • 夢中になれることが見つからない。

そんなことはないのが農業かもしれない。そう感じるほどみんな夢中になっている。休憩時間に気を配らないと倒れるまでやってしまいそうだ。

「トイレ行きたい人?!」

と叫ぶとみんなが手をあげる。トイレに行かずにゲームしている子どもみたいだ。

協力するのが楽しい
  • 工夫するのが楽しい
  • 身体が悲鳴を上げるのが心地よい
  • チームワークがより夢中にさせる
  • 振り返ると成果が目に見える
  • 見渡すと「あそこまで頑張ろう!」という場所が見える
  • 身体が慣れてくる
  • 複雑な動きが自然にできるようになる
  • ありがとう😊としょっちゅう言われる
  • ありがとうと自分も言っている
  • 野菜の気持ちがわかってくる
  • 土の気持ちがわかってくる
  • 台風が来た時の畑を想像する
  • 収穫を楽しみにする
協力し合うのが楽しい

夢中になる理由はたくさんある。それを幸せと呼んでも良いのではないだろうか?残念なことに都会にはそれがない。

その後(2019年11月1日加筆)

台風に負けず、上記のレタス畑ができた
生えていないところはすでに売れた^^
(2019.10.31)
いちご12月になったら収穫が始まる
(2019.10.31)
大雨・台風で流されてしまったニンジン
場所はバラバラだがちゃんと育った
収穫しにくいけれど、良かった!(2019.10.31)
あやめ大根・紅芯大根は
立派に育って、地元の2、3歳児の
収穫イベントに!!(2019.10.31)
なすの時期も終わり
収穫後も根を抜いて、シートを外し
ポールを取り除く作業が残る
(2019.10.31)

IRORI場の夜は静かだ。時折車の音がするくらいだ。星を見上げても良いし、お風呂に入っても良い。みんなで夕飯を作るのも楽しい。

ゲームをしていても良い。もちろんWi-Fiもある。

人と人との距離が変わる

苦労を共にすると心がつながる。今までよりも早く、あっという間に仲間ができる。居場所がなかったはずの人でも家族のような輪の中に自然に入る。

お子さんが一人で生きて行くには自分の力で他人とつながらないといけない。ここにはまさにそれがある。

5.保護者に上司に試して欲しい「さとこもり」

「うちの子をさとこもりに」

ありがたいことにそういう方が増えてきた。「さとこもり」が「ひきこもり」よりも気持ちを前向きにしたり、生活リズムを作ってくれたり、人間関係を良くしてくれるのは想像に難くない。

想像を上回る体験

ただ、できるなら「誰かにさとこもりを体験させたい」と思う保護者や上司には自分自身でまずさとこもりを体験して欲しい。

なぜならば
保護者や上司の想像を上回るのが「さとこもり」だからだ。「自分はわかっているから誰かを送る」そんな気持ちで「さとこもり」に人を送るとどうなるか?

さとこもり後に潰してしまう

のだ!

少し想像してみればわかる。想像以上の体験をして、目に光が戻った人に「知りもしないで」言葉を発しても響かない。そればかりか潰してしまうのだ。

「なんだ。自分が言いたいことを伝えるためにさとこもりをさせただけか?」と失望させてしまう。さとこもり後に人がどうなるかを体験していればそうはならない。

評価のない世界

さとこもりの魅力のひとつが「評価のない世界」を体感することにある。

理解がない支援者は「うまくできたの?」「迷惑をかけなかった?」「価値観が前向きになったの?」とまくしたてる。それがナンセンスだということはそれこそ参加してみたらわかる。

そうやって、
さとこもりを実践した当事者を傍観者が潰してしまうことは本当によくあることだし、残念なことだ。

だからこそ、ぜひ、まずは自分自身で体験してみてほしい。

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yuichishiina

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精華学園高等学校 町田校舎長・一般社団法人 日本心理療法協会代表理事・NPO法人ユメソダテ 理事 など。悪い人がいるのではなく、理解し合えていないことが問題。と人と人との心をつなぐ活動を展開中。

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