手塩にかけた野菜と食品ロス@多摩市 NPO法人シェアマインド
多摩市にあるNPO法人シェアマインドさんにお話を伺いに行ってきました。目的は「食品ロス」をなくす取り組みを教えていただくこと。そして、農福連携の活動でやむなく発生した「野菜の売れ残り」を生かすことができないか探ることだ。
目次
1.野菜のためにも売り切りたい
農業に関連した活動をするようになって「売れた野菜」「売れなかった野菜」が気になるようになってきた。長谷川農園の野菜は飛ぶように売れるので売れ残ることはまずないが、それでも残ってしまうことはある。
1日、駅前で販売していた野菜は少なからず傷んでいる。
手に取って触ってみてもわからないくらいの痛みだし、持ち帰って冷蔵庫に入れれば(野菜にもよるが)一週間は余裕で食べられる。
でも、一旦持ち帰って、翌日も駅前で売れるかというと少し怪しい。売っているお店はたくさんあるが、「朝採り」を売りにしている長谷川農園としては2日目は、、、
翌日も店頭に並べてしまうと「販売する野菜の品質」という意味では厳しくなってくる。
「食品ロスをなくす」つまり、食べ物を大事にする意味では全ての野菜がその日のうちに誰かの家の冷蔵庫に収まって欲しいのだ。
残念ながら誰にもひきとってもらえなかった野菜。それらを無駄にしない方法として「食品ロス」をなくす取り組みを思いついた。
なんだか野菜の里親を探すような気持ちだ
ナス
長谷川農園のナスを収穫して自宅用にいただいたことがある。お酢ととオイスターソースにつけて味付けをしたが、中身が詰まったナスの食感が最高だった。根性のないヘロヘロのナスとはだいぶ違う。これを食べて喜ぶ人は多いと思う。食べてもらって僕たちも喜ぶ。
2.NPO法人 シェアマインド
今回訪問したのはNPO法人シェアマインド 代表理事の松本靖子さん。松本さんは
今日を生きる食事を手にできない人がいる
でも
年間646万トンの食料を捨てている日本
※世界食糧計画(WFP)による世界全体の食料援助量の2倍
こんなおかしな社会に一石を投じるために法人を起こして活動をされているかただ。ルールでがんじがらめな今の社会では意味がわからない食品ロスがたくさんある。
しいたけ入れ忘れた冷凍肉まん
食品には「原材料」の表示が必要だが製造過程で原材料に書かれている材料を入れ忘れたり、量を間違えたりすると「食品」と「表示」が異なってしまうので流通させられない。製造した瞬間に「食品ロス」となる。
印字がずれた食品
印刷のミスでパッケージの印字がずれてしまっただけでも流通させることはできない。こうなると何千個、何万個という単位で「食品ロス」になる。
飲食店やコンビニ
これはよく知られていることだが、「いつでも食事が出せる」「お弁当がある」ということは余分に材料やお弁当を用意しているということ。1日に1人しか来店しない飲食店でも全てのメニューのための材料を用意している。
フードバンク
そんな「食品ロス」が「食事を得られない人に渡るように」と始まったのがフードバンクだ。でも、フードバンクの仕組み自体はそんなに綺麗なものではなさそうだ。
- どの食品が誰にいくつ渡ったかの記録を全部取らなくてはいけない。
- 企業の都合で大量の食品が寄せられるが、利用者ニーズとのミスマッチも多い。
- 無料で配布しなくてはいけない。
- だから、活動する人の人件費や倉庫代などは別の補助金などを申請する必要が有る、、、、
松本さん曰く、無料で配布することが必ずしも良いとは限らないという。無料でもらった食事には利用する人も関心を持たない。企業はお金をかけずに大量のロス食品を“寄付”する事ができる。しかしそれが利用者に求められない食品だった時、フードバンクの人は「何のためにやっているのだろう」となってしまう。
500円パック
松本さんは試行錯誤の末、フードバンクのやり方を改良して、500円パック(中身は何千円相当の食材)を配布するようになったという。500円払っているからこそ利用する人も食材を大事にしてくれるし、市町村から生活が苦しい人向けに500円パック無料券にあたるものを配布してもらうことで本当に困っている人にも負担なく食料が届く。
それでも課題は山積みだという。
3.食品ロスをめぐる難しい問題
「売れ残った野菜を活用したい」という思いつきで松本さんと知り合ったが、事態はそんなに簡単なことではないことがわかってきた。
「食品ロス」を扱い始めると経済力に関わらず「安いものを買いたい」と思う人が店頭で買わなくなる。スマホゲームがどんなに素晴らしくても無料でプレイできるようになってしまい、「課金したら負け」「無料で遊んでクレームは言う」という流れになっているのに似ている気がする。
「食品ロス」をこのまま日本で展開すると「食品ロス」コーナーに人が並び、店頭には人がいなくなるような気がする。正規の動きがあっての「ロス」のはずがロス狙いの人がたくさんでてきたら、その業界は潰れてしまう。
食品を提供する立場からすると「食品が自力では得られない人」に届けたいと思う。「食品を買う余力がある人は店頭で買って欲しい」と思う。
「食品ロス」の立場で考えるとどんな人でもロスになりそうな食料を無駄にしたいことは大事だという発想に当然なる。配布する人を選ぶ必要はない。
大事に育てた野菜を誰にどのように届けたら良いかはまだまだ考える余地がありそうだ。これからもじっくりと考えてみたいと思う。
4.即席取材班
今回はSNSで「今日の訪問手伝ってくれる人?!」と告知して、助手を募集した。夜中の12時頃投稿したにもかかわらず、朝起きたら2名(男子+女子)の応募があった。
とてもありがたい限りだ。取材に同行してくれるとこんないいことがあるよ。
- ご飯をおごってもらえる場合がある
- いろいろな業種の裏側の話を聞くことができる
- 椎名雄一の傾聴、交渉が間近で見られる
これからもタイミングがあったら、手伝って欲しい。
即席取材班の感想
今日は私自身が仕事をはじめて初勤務の日だった。だから『仕事とは?』を考える1日だった。
今回のように訪問してお話を聞く機会は初めてだった。椎名さんの挨拶の仕方とかメモの取り方とか話の仕方がとても勉強になった。途中でトイレに行きたくなってしまったのが残念。行っておけばよかった。
予想外に駅から車で3人でドライブのような感じで現地に向かったので楽しかった。私が運転できればもう少し役に立てたのにと思う。
また行こう!