おそるべき食の話@山形県高畠町
基本的に私はダイエットと健康食の話は信じないようにしています。「安易な気持ち」と「売りたい気持ち」が透けて見えてしまうことが多いから。
目次
1.スーパーサイヤ人
今回、山形県高畠町で菊地良一さんの夕飯を食べて衝撃を受けた。
野菜が強い!戦闘能力の高い野菜だ!
なんと例えたら良いだろうか?パッとベジータが頭をよぎった。スーパーサイヤ人(やさい人)のベジータやナッパたちは戦闘能力が高い。
無理やり説明するとニンニクをスマホを見ながらバクバク食べる人はあまりいないと思う。適量があるし、油断ならないエネルギーがある気がする。私にとってニンニクはそうだ。
菊地さんの野菜は人参もピーマンも玉ねぎもキャベツもシイタケもどれも味というか魂というか何かが濃い。今まで感覚的にはわかっていた違和感が頭に浮かんだ。
ふだんの野菜はカスなのではないか?
「だから、、、」と食に詳しい人はいろいろな食べ方を勧めてくれる。残念なことにそういう勧めで、なるほどなと思うことはあまりなかった。理由は簡単だ。
その人たちが勧めるサプリやドリンク、野菜から生命力を感じないからだ。綺麗なパッケージと売り込むための知恵とお金の匂いがする。それは食品ではない。商品だ。
カスにカスを足してもカス。そんな感じが否めない。
2.ちなみにアフリカでは
今回、案内してくださった外薗さんは通称サムライ先生と呼ばれ、かつてアフリカ・ウガンダで活躍していた人だ。
アフリカにはこういう症状はないのだと彼はいう。
- 頭痛
- 倦怠感
- 肩こり
- むくみ
- 睡眠障害
- イライラ
- 摂食障害
- 不安
キリがないのでこの辺でやめておくが、彼らが「病気」と呼ぶのはエボラ出血熱、マラリア、狂犬病などであって日本で病気とされているものはない。
病気の質の違いが明らかにある。日本のそれは生活習慣病というか、文化が生み出している病だ。
当たり前だけれどもウガンダの人たちは体を毎日かなりよく使い、土からできた食べ物を食べる。うつや摂食障害、睡眠障害などが都市型の生活に由来するものだとしたら、都市型の制度と薬で治せるという発想は無理がある。都市型の害を減らすことが治療につながるのではないかと感じてしまう。
(外園さん談)今回、椎名さんと佐久間くんとの出会いにより、地方の若者人材流出の悩みを解決する大きなヒントが得られた。都会で役割が欲しい若者が輝ける場所を田舎で生み出して架け橋となりたい。
3.母なる大地
お母さんの羊水を科学的な薬品で作ったら子どもが育つだろうか?化学物質を計算して飲めば子どもが育つのだろうか?
感覚的に大事な何かが足りないのではないかと心配になる。野菜や米も同じなのだそうだ。微生物のいない死んだ土に科学的な薬品を混ぜ込んだらカスのような野菜が取れる。
「今日は野菜が足りないから、じゃがりこを食べました。美味しく野菜が取れて便利です。」こんな若者に出会ったことがある。これを私たちは笑えるだろうか?大して変わらないと思う。
微生物が住む生きた土
菊地さんは土の中にいる微生物たちの顔が思い浮かんでいるかのように土を作る。魚を好む微生物。野菜の生ゴミを好む微生物。土の中のいろいろな種類の微生物を育てることが第一歩だという。
どんな微生物がどれくらいいたら良いかを調べているからどんなエサをどれくらい与えたら良いかがわかっているのだという。
「土に手を突っ込んでごらん」
菊地さんは言う。
まだまだ朝は氷が張り、霜が降りる季節なのに菊地さんの土は温かい。ホカロンを埋めてあったかのようだ。
「微生物がいる土は生きているんだ」
菊地さんは言う。
50年に渡って、微生物を殺さず(当たり前だが一回薬を撒いたら死んだ土になる)微生物に必要なエサを与え続けてきたのが菊地さんなのだ。
土を食べると病気が治る
高畠の土の中には微生物が生きている。熱を持つほど元気に。おそらくたくさん生きている。
「発酵食品は健康に良い」という人は都会でもよく出会う。菊地さんが言うには高畠の菊地さんの育ててきた大地はぬか床のようなものなのだという。
ぬか床そのもののような大地で育てた野菜が強いのはうなずける。野菜の根の周りに微生物がたくさんいて、野菜を育てている。聞いて仕舞えば当たり前の仕組みだ。「リンを撒く」のような育て方とは基本が違う。
昔の人は土を食べれば病気が治ると言った。化学肥料を撒いている土はそもそも食べられないが、微生物が生きている土を食べるのは腸内環境を理想的にする簡単な一手だ。
人間の腸は植物の根である
菊地さんは人間の腸は「根」なのだという。微生物がたくさんいて、人が食べたものを微生物が食べる。人が食べているのは微生物のエサだ。
この仕組みは人間がどんなに進化したようでもかっこいい理屈を組み立てても40億年前(諸説あるようですが、はるか昔という意味で)から変わらないのだという。微生物がいるから私たちは生きているのだ。母なる大地があるから生きているのだ。
「生物の頂点は微生物であって人間ではないよ」
微生物に対する愚直なまでの感謝の思いが菊地さんの思想を支えているように感じた。
4.全ての出来事はたとえである
この言葉は私が活動の中心に据えている大事な言葉のひとつだ。そして、農家の菊地さんが驚きのひとことを口にした。
会社もそうだろう?
微生物たる社員ひとりひとりが死にそうな会社はどんなに素晴らしい仕組みを作っても、一時的に売り上げを伸ばしても長続きしない。
人を大事にしない社会をそのままにして、診断と薬と保障でなんとかしようとする。化学肥料と精神薬。なんか似ている。不登校を仕組みや制度、お金や薬品で解決しようとする。足りない栄養をサプリメントで補おうとする。
安易な感じがそっくりだ。自然も人間もそんなに単純ではない。
5.マイナスエネルギー
上手い例えが思いつかないが、例えば誰かに「ハワイ往復の航空券」をプレゼントしたら、その人は旅行カバンや空港までのバスのチケット、よそ行きの服などを買うかもしれない。パスポートを作るかもしれない。
手に入れたものを生かすために自腹を切らないといけないことがある。カスの食材を食べるのはそういうことなのだという。その自腹の部分を菊地さんはマイナスエネルギーと呼ぶ。
パンや白米に代表される炭水化物だけの食事を食べると足りないものがたくさんある。あえて言葉で言うならミネラルなどだ。そうするとパンを取り込むために足りないミネラルはどこから持ってくるのか?自分の身体からだという。パンを頂く代わりに自腹で栄養素を使うわけだ。
「食後に眠くなるのはそれだ」
菊地さんは言う。試しに菊地さんが勧める自腹を切らないで済む料理を食べると、、、
眠くならない!ぼーっとしない!
お腹いっぱい食べても眠くならなかったのは何年振りだろうか?
「血が胃に行くからだよ!」と今まで教わってきたがそれだとつじつまが合わない。こんなにお腹がいっぱいなら胃は大変なことになっているだろうにまったく眠くならない。
山形に初めて行ってから一週間になるが、眠くなることがなくなった。単純に稼働時間が数時間増えた思いだ。食べてすぐに動けるのはありがたい。
6.愚直すぎる
菊地さんの食事と話は霧が晴れるように納得できた。でも、ふつうの農業の5倍近い労力をかけて採算がとれるのだろうか?
「まったく採算が取れない」
という。だか、食の問題はもはや菊地さんの売り上げの問題でもなければ高畠町の繁栄の問題でもないのだという。
日本人の身体が使い物にならなくなるかどうかの瀬戸際なのだ。カップラーメン食べて、自律神経失調症になって、薬を飲む。都会の当たり前が日本中に広がりつつある。
高畠町は「最後の砦」なのかもしれない。
日本の農家の中には高畠町以外でも有機農業を頑張っているところがあると思う。でも、売上のために有機農家だと言いたいところも少なくない。
http://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/yuuki/attach/pdf/index-68.pdf
たったの2年。化学肥料を撒いてないなどの条件を満たせば有機農業と言っていい。というルールがある。それに照らせば有機農家はたくさんある。
でも、その2年で大事なのは
- 化学肥料がどれだけ無くなるか?ではなく
- 微生物がどれだけよみがえるか?
ちょっと考えたらわかる。死んだ土が2年後に微生物だらけになるだろうか?死滅していなくなった微生物がどこから復活すると言うのだろうか?失われたものはそう簡単に帰ってこない。
7.でも信じない
そこまで考えている菊地さんの話はとても納得がいく。でも、食の問題は10年。30年で見えてくるものだと思う。だからあえてまだ信じない。
菊地さんの農産物を興味がある人に試してもらいながら検証していきたいと思う。大事なのは未来につながる真実。売り上げとか宣伝はいらない。
まずは身近な人で食に問題を感じている人や過食症だという人に身をもって試してレポートして欲しい。もし、菊地さんの考えが正しいとしたら微生物を死滅させてしまった農地を無毒化して、菊地さんの畑の土を移植すれば微生物が増えてくれるかもしれない。日本中の農地から微生物のザワザワした気配を感じるようになったら、食事が原因の病気がなくなることが期待できる。
興味がある人は実験に付き合って欲しい!