さとこもり体験 第一弾!@赤城山麓
都会で仕事などの役割を見つけられていない人や心の問題などでひきこもっている人を里山に連れて行って、「さとこもり」をしてもらう企画。
さとこもり体験
目次
これまでの流れ
2019年3月 農福連携フォーラム
2019年5月 前橋・赤城山麓エリアにご縁
2019年6月 農業をたくさん体験
2019年7月 新宿ルミネで野菜を販売
1.農業を職業として試してみたい
2019年8月にようやく「さとこもり体験」第1号として、遠く平塚から前橋まで参加してくれる人があらわれました。
今までは仲間と試行錯誤をしていたのですが、いよいよ初対面の人とも「さとこもり」ができそうな流れになってきました。
さとこもりとは?
「都会でひきこもるなら里山にこもろう」というコンセプトで都会でやることが見つけられない人やメンタル不全などで部屋にこもっている人に里山で農業、林業、観光業などにゆるく関わる機会を作る計画。
D-career様
研修などで一緒に仕事をさせて頂いているハッピーテラス株式会社が運営する就労移行支援施設 D-career さんから「前橋に行かせたい人がいる!」と相談を受けました。
もともとは町田に新しくD-careerさんがオープンするので「仲良くしましょうね」という会だったのですがそれが縁で「さとこもり」希望者と巡り会えました。
その方は別の企業の就職も検討しつつ「農業かもしれない」という思いを検証するために希望してくれました。
2.前夜
その人。Yさんは「朝5時からの農作業を体験したい」ということだったので前日の夕方に前橋にきていただいた。本拠地の古民家 IRORI場 だ。
IRORI場
赤城山の麓の古民家を改装して、若者2人が宿を運営している。その古民家が多くの人の活動の拠点になっているのだ。
3.台風の中でのナスとの戦い
その日は夜、窓の外で「ゴーゴー」と音がしていた。
嫌な予感がするな、、、
やはり「洪水のような台風だ」直撃ではないので作業はできるけれど、、心が折れる。。。。
農業ジョブコーチ
ナスの葉っぱ落としも以前に体験していたので軽い「農業ジョブコーチ」として活躍することができた。
でも、長年の経験があるわけではないので「不安」だけど、、、
農家の長谷川さんは僕に作業を任せて、難易度の高い「オクラの収穫」に向かった。オクラは皮膚が荒れるので危険なのだとか。
4.ブロッコリーの種まき
いよいよ雨がすごくなってきたので、ビニールハウス内の作業をすることになった。多品種を育てている長谷川農園だからこそ出来る芸当だ。作業が多岐にわたるので、晴れ用の作業も雨用の作業もたくさんある。
まずは種を蒔くための土作りから。
農業ジョブコーチ 2
この前はいちごだったけれど事前に体験していたので要領もわかっているし、関わりやすい。「農業ジョブコーチ レベル1」としては、良い機会だ。
支援員さんが横浜から応援に
就労移行支援って近所の会社を紹介する仕事だと思っていたので、横浜の事業所の人が前橋に来るのは驚きだった。
でも、こういう連携がやりたかった。他にも都内の就労支援事業所、学校、家庭でやりたい人いるはずなんだよな。
種を200個いれてまわりをみると「僕も種をまいて!」と言わんばかりに種まきセットが積み上がっている。急にみんな静かになった。
カニを穿っているような感じだ。
そんな中で台風の余波の雨が滝のようにビニールハウスの屋根に当たる。意外に素敵な時間となった。
「いやーよく働いた!」と思ったらまだ午前中。
これが「さとこもり」の醍醐味かもしれない。これからビールを飲んで寝てしまっても運動不足でもないし、仕事やっているし、人との関わっているから気持ちよく酔える(僕はお酒が飲めないから、こういうときにはチョコミントのアイスを食べたい)
5.昼寝
僕自身も寝てしまったので写真を撮り忘れたが、この後、お昼ご飯を食べて、長谷川農園を後にして、IRORI場に戻った。
シャワーを浴びて、板の間で寝る。
なんて素晴らしい昼寝なんだ。気が付いたら、農業をやっていた人だけでなく、IRORI場のメンバーも看板猫のムギちゃんも寝ていた。
6.真面目な考察
まだまだ改善の余地があるにしても「さとこもり」の価値が今回は強く実感できた。
- 観光で農業体験をするのとガチで農業を体験するのの違い。
- 観光で地域を外から味わうのと地域の生活にガチで入り込む違い。
越後湯沢のスイカの収穫体験は楽しかったけれど、観光用の体験なのでよくて3個収穫したくらいで15分もかからなかった。
それに比べると今回の農業体験は台風の中みんなで工夫しながらびしょ濡れになりながら腰をさすりながらの6時間。
「腰が痛くなって、それをごまかしながら続けていって、本当はそれを数日やるとどうなるか、、、あたりからがリアルなんだよね」と僕は思う。
参加してくれたYさんも「やりきった。楽しかった。これが1週間続けられるのか試してみたい」と感想を言ってくれた。
朝
都会のひきこもりの朝は(僕も8年ひきこもっていたのでよく知っているが)活動を始める自分以外の社会と自分を比較して苦しくなる時間だ。
夜、なかなか寝付けなくても新聞配達のバイクの音がして家族が目をさましたりして生活音がし始めると苦しい気持ちになる。「あーたーらしい。あさがきた!きーぼうのーあさーだ!よろこーびに、、、」というラジオ体操の音は不謹慎極まりなく感じる。意識を飛ばすために寝たくなる気持ちは痛いほどわかる。
さとこもりの朝は目覚ましがいらない。太陽が差し込む5時頃には鳥がうるさい。キツネも鳴いている。なんだか自然に目がさめる。空気が気持ち良い。朝日が優しい。でも、人の気配はない。誰も「起きなさい!」「活動しなさい!」と煽ってこない。煽るような雰囲気を出してこない。吸い寄せられるように散歩をしに出かけてしまうことも多い。
午前中
午前9時と言ったら都会では本格的に仕事や勉強を始める頃。ひきこもりは遊ぶわけにもいかず、外出しようにも近所の目や家族のリアクションが気になって動けない。そもそも都会の人混みを通らないとどこにも行けないなら動きたくない。だからゴロゴロしている。時間に比例して、罪悪感や劣等感が積み上がってくる。
さとこもりで農業に参加すると9時までにナスを100個以上収穫して、ブロッコリーの土をこねている頃だ。(それも今回は台風で中断しながら)「いやーよく働いた!」という満足感で時計を見ると(9時)を指している。びっくりだ。罪悪感より達成感、充実感があるし、作業が難しいわけではないので優越感はないにしても劣等感はない。自分もできているという感覚が強い。
昼
ひきこもりが動き始めるのはこの時間。動き始めると言っても家族は仕事などでいないし、外出するほど元気じゃないからゲームかテレビ、YouTubeくらいしか選択肢がない。最初のうちは映画を見るが、2時間くらいでは夕方が遠い。なので、アニメはドラマを一気見するようになる。不全感がいっぱいの中で時間だけを浪費していく。「ありがとう」と言われる作業で僕ができることがあるならやりたいです。とひきこもりの人はよく言う。そうなのだ。都会にはそれがない。
さとこもりはこの時間には満足感と疲労感でいっぱいだ。お昼で寝てしまってもそれほどサボっている感じはしないし、身体が疲れているから眠くなる。この昼寝が最高なのだ。現実から逃げるための睡眠をとっていると睡眠障害になる。疲労を回復するための睡眠は質が違う。ぜんぜん違う。
夕方
ひきこもりは「今日もできなかったな」という罪悪感とそろそろ家族が帰ってくるプレッシャーでそわそわし始める。だからと言って活躍の場はないから結局のところ寝てしまうかゲームをするかくらいしかない。
寂しいから家族とも話をしたいが「できていない自分」には受け入れられない話がたくさんある。「オリンピックで頑張っている人の話」「近所の頑張っている人の話」自分と比べてしまうと辛くなるような会話のテーマが地雷のようにあると家族と話をするのもつらくなってくる。
さとこもりの会話は「今日あった出来事」だ。収穫したナスの話。痛くなった腰の話。ドロドロになった服の話。何も傷つくことはない。一緒に体験した事実を共有する話は純粋に楽しい。都会では「ここにいない有名人や政治家、犯罪者の話」「ここではない誰かのエピソード」「自分とは関係のない作品や商品の話」が多いけれど、今日まさに体験してきたことを話題にした時にコミュ障な人はあまりいない。
夜
ひきこもりをしていると夜にかけて目が冴えてくることがある。ゲームをしたり、YouTubeを見たり、ネット上の友人とやり取りをしたりして、「自分の存在を確認する」「いいね」をいくつもらっても満たされない思い。さみしさ。輪に入れていない感じが付きまとう。
さとこもりは夕食を食べて、おしゃべりを楽しんだら一人の時間を楽しむ。この充実感の中で見るYouTubeやプレイするゲームは格別だ。気持ちが切り替わる。満足いくまで楽しんだら寝る。
ひきこもり vs さとこもり
大げさではなく、都会のサイクルに病んでいる人は多い。61万人いると言われるひきこもりが家から出られない理由は本人の気持ち以外にもたくさんある。「やることがない」「関わってくれる人がいない」「批判的な目がある」「人混みを通らないとどこにも行けない」「公共交通機関は強い人の場」・・・
舞台を「里山」に移すだけで事態は大きく変化する。自然が相手をしてくれる。人はまばらで農地を見渡しても数人しか人影がないこともよくある。作業は簡単でできてしまうから批判的な目を感じたり、劣等感を感じることもない。
難しいのは都会のひきこもりが「知らない土地怖い」「農業大変そう」のように思って、飛び込めないことと。農家などの地元の人が「ひきこもりとの関わり方がわからない」「加減の仕方がわからない」「突然暴れたりするのかな?」という不安もある。
実際に農家が過剰に気を使いすぎて疲れてしまったり、不満が残ってしまうことも多い。
それを間で調整するのが僕たちの役目だ。「農業ジョブコーチ」をしながら「カウンセラー」をする。それが緩衝材になって、双方をつなぐことができる。
それには次の3つが必要だ!
1)体験してみたい都会のひきこもり(気味な人も)
2)橋渡しをしたい「農業ジョブコーチ」+「カウンセラー」をしたい人
3)都会の人を「金」と見ないで関わってくれる地方の人
赤城山麓エリアにはこれが揃った。これから1)2)3)を順番に増やしていく予定だが、1)2)をまずは募集したい。
1)
地方に1泊(さとこもり体験)7泊以上(さとこもり)したい人やさせたい人がいる人はぜひ協力して欲しい。また、今回の就労移行支援事業所のように協力しあったら良い結果になりそうな仕事をしている方は声をかけて欲しい。
2)
農業ジョブコーチは都内の人なら自分で前橋まで行き来できる人。前橋エリアの人なら興味がある人。協力して欲しい。